ノートルダム大聖堂大火災後に見えてきた希望
今月15日夕方に発生し、パリジェンヌ・パリジャンだけでなく、世界中の人々が衝撃を受け、涙したノートルダム大聖堂の大規模火災から3日経った。
パリの象徴であり、世界遺産としてセーヌ河岸に美しく佇むあまりに有名な歴史的建築物(築850年)が、巨大な炎と黒煙を上げて轟々と燃えさかる世も末な光景には、ニューカマーの日本人である私ですら泣きたくなった。
石造りにもかかわらず、「石油でも撒かれた…??」と青ざめるほどの燃えっぷりにテロを疑った人は多いと思うが、おそらく改修工事中の失火のせいで、尖塔や屋根のオーク材に勢いよく燃え広がってしまったという。
(いやそんな簡単には燃えないでしょ?事件性否定するの早すぎ、など疑念の声もあるが)
当日は深夜まで、燃え上がる大聖堂を前に淡々と賛美歌を捧げる人々を写したライブ配信を見ていた。
画面隅のコメント欄が、各国の言葉で超速で更新されていく…。
爆速の巨額寄付発表
大火災自体も衝撃的だったけれど、鎮火もままならないうちに再建費用として、桁違いな巨額寄付の発表が国内で相次いたことにも度肝を抜かれた。
ノブリス・オブリージュ(富める者の社会的責任と義務)を即座に実行するフランス超富裕層に、彼らの矜持を見た。
すわ我らが貴婦人(Notre-Dame)の危機とあらば、凡人には想像もつかない額をポーンと放出するわけだ。
これまで主に巨額寄付を発表した団体は、以下の通り。
- モエ・ヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)と大株主ベルナール・アルノーCEO一族2億ユーロ(約250億円)
- ロレアル(L’Oreal)と大株主ベタンクール・メイヤー一族2億ユーロ(約250億円)
- ケリング(KERING)フランソワ・アンリ・ピノー会長兼CEO一族1億ユーロ(約125億円)
- トタル(Total)1億ユーロ(約125億円)
トタルはフランスの石油大手だけれども、その他はファッショナブルな高級ブランドを擁するフランス大手グループ(とその創業者一族)。
モエ・ヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、ディオール(DIOR)、セリーヌ(CELINE)など言わずもがなのブランドに加えて、モエ・エ・シャンドン(MOET ET CHANDON)やドン ペリニヨン(DOM PERIGNON)などのシャンパーニュブランドも。
ロレアル(L’Oreal)は、ロレアル パリ(L’Oreal Paris)、ランコム(LANCÔME)、シュウ ウエムラ(shu uemura)、イヴ・サンローラン・ボーテ(Yves Saint Laurent Beauté)などの化粧品ブランド。
ケリング(KERING)は、グッチ(GUCCI)、サンローラン(SAINT LAURENT)、バレンシアガ(BALENCIAGA)、ブシュロン(BOUCHERON)などのブランドを傘下に持つ。
やれ売名・広告宣伝だ、節税対策だとの批判もあるけれど、個人的にはそれでもいいじゃない、と思う。
ノートルダム大聖堂を美しく蘇らせるには、現実それなりの資金が要る。
「ジレジョーヌに対しては無視を決め込んでいるのに」「人よりも石優先」との不満もあり、せっかく再建しても民衆の怒りの矛先が彼女(大聖堂)に向かってしまうおそれもなくはないけれど…。
見事な消火活動
約400名ものポンピエ(消防士)の消火活動も見事だった。
通常の火災と違って世界遺産ともなれば、早急な鎮火と、建築物や文化財の保護を両立させるめちゃくちゃ難易度の高い仕事になる。
はじめの30分ほどの的確な消火活動が被害拡大を防ぎ、主要構造の焼失を防いだという。
「上から水をかけては?」とのトランプ米大統領 on Twitter のアドバイスを一蹴し(汗)、文化財保護や消防士の安全確保など多方面への影響を考慮した適切な消火活動にあたり、見事に数々の至宝を守り抜いた。
火災後の薄暗い大聖堂内部で散乱した瓦礫を前に、損壊を免れた金色の十字架とピエタ像に光が当たっている報道写真の構図が印象的だった。
三つのバラ窓やパイプオルガンも無事。カトリック教会最重要聖遺物の一つ「いばらの冠」など、各種お宝も運び出されて無事だったらしい。
崩れ落ちた尖塔のてっぺんに設置されていた、パリのお守り的な銅製の雄鶏が原型を留めて回収されたニュースも希望を与えてくれる。発見者の男性に抱っこされていた姿が愛らしい。(笑)
かつての麗しいお姿
南塔と北塔を結ぶキマイラの回廊に上ってみたかった。
ここは無事だったけれど、火災の影響で当分封鎖される。そこから間近に眺められたはずの尖塔は、もうない。
いつでも行けるもんね、と後回しにしてしまったことが悔やまれる。
マクロン大統領は「5年で再建を」と激励していたが、専門家からは数十年かかるとの見解も出ており、リニューアルオープンがいつになるのかは、まだ誰にも分からない。
最後に惜しみながら、火災前の尖塔の麗しいお姿を貼っておこうと思う。
途方もなくショッキングなできごとではあったけれど、富裕層が投下してくれる巨額マネーや専門家のスキル、人々の再建への祈りがそう遠くない未来に結実して、ノートルダム大聖堂が再び美しく蘇ることを願う。
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