日本人も無関係ではない中国人狩りとアジア人差別について思うこと
自己認識の変容
日本にいたとき、自分は当然のように日本人であって、自らをアジア人と意識したことなど特段なかったように思う。
けどフランスにいると、嫌でも自分が「アジア人」という大雑把なくくりにカテゴライズされているな…と感じることが多く、自己認識が日本人より先にアジア人、になってしまった。
先方(黒人などの移民を含むフランスの人々)からすれば、マイノリティで骨格や体型、顔立ちが自分たちとまるで異なる黄色人種は皆アジア人なのであり、中国人、韓国人だろうが、日本人だろうが大差ないというか、少なくとも外見上はあんまし区別が付いていない人が大半である。
この事実は実際に直面してみると、やはりショッキング。笑
日本人がいくら、世界に誇る日本文化!世界第三位の経済大国!(?)などと喚こうが、遠いアジアの島国に興味や関心を寄せ、その文化や経済に精通しているのは、教養のある and/or マニアックなフランス人か、親しくしている日本人が身近にいるごく一部のフランス人。
おおかたのフランス人にしてみれば、我々は依然マイナーであり、遺憾ながらあまりイメージのよくないアジア人、なのである。
先輩アジア人の様子
かつて遠い異国で大変な苦労をしながら道を切り開いてきた先輩方をディスる気は毛頭ないのですが、現在のわれわれのイメージを形作っているアジア人といえば、圧倒的に中国人。
彼らはパリ13区その他で中華街を有し、美味しい中華料理店や、激安アジア食材スーパーを多数展開しているので、いつもありがたく利用させてもらっている。中華大好き。
一方で全員がそうではもちろんないのだけど、そのファッションや振る舞いは、残念ながらエレガンスとはほど遠い、、場合も少なくない。
ところ構わず大声で中国語で会話する、色がとっ散らかったヘンテコな装い、大勢で歩道を占領する…など。
一歩踏み込んでみれば、温かみがあって優しかったりするけど、表面上は非常にそっけなかったりする。
また日本人にしても、公共の場でフランス式のマナーを心得ず、バスの運転手さんに挨拶しなかったりして(笑。日本では普通しないと思うのですが、こちらではかならず目を見て、ボンジューと挨拶して乗り込むのがマナー)、知らず識らず、
「やっぱアジア人は感じ悪いな、笑顔もないし自閉症やな。」
などという印象を残してしまっている恐れがある。
また全体的に、気合いが入り過ぎていて野暮ったいか、どう見えるかなんてどうでもいい、とばかりに超ダサゆるカジな出で立ちで街を闊歩していたりして、これまたファッションを重視するお国柄としては、受け入れ難いものがあるのもうなづける。
そんな感じだから、「われわれアジア人がちょっとした偏見の目で見られているのも、しょうがないかも…」などと、被差別側ながら逆に共感すらしてしまっている。
実際にはフレンドリーで優しい
差別といっても、露骨に感じわるく対応されて「差別やな!!!」と感じたことは、じつは一度しかない。
その一度は、移民局。笑
実際に住んでみて驚いたのが、意外にも親切でフレンドリーなフランス人が多い、というのがある。
「ボンジュー」と挨拶すれば、たいてい分け隔てなく接してくれるし、ニッコリ笑顔してくれることも多い。
アジア人がどうのというより、あくまでもフランス文化を尊重し、フランス式マナーに則っているか? がポイントになっている気がする。
我々だって、日本に来てなじもうとせずに、自国流を貫こうとする外国人には、いい気はしないのではないだろうか。
それと同じである。
自分の国ではないところにお邪魔している以上、その国のやり方に合わせるというか、謙虚に合わせようとする努力を見せるのが礼儀というもの。
アジア人として被差別側にいる、と書いたけれど、体感としては、フランス式のマナーを心得ていないアジア人に多数遭遇してきた結果、初対面で先方に芽生えている小さな警戒心を察知する、といった感じに近い。
こちらがきちんと挨拶し、ヘタクソでも懸命にフランス語で話すと、たいがいウェルカムに接してくれる。
なにぶんパリ暮らしが浅いので、少ない経験からの所感ではありますが。
まず我が身を省みる
なので、もしパリに来て、
「差別された……。やっぱりアジア人は差別されてる。フランスはレイシスト大国や!!」
などと顔が赤くなるようなことがあったら、ちょっとだけ冷静になって、我が身を振り返ってみてほしい。
- フランス語でボンジュー or ボンソワーと挨拶したか?(フランスはアバウトだけど挨拶には厳しい)
- 英語で押し通そうとしていないか?(ハローじゃだめ。せめて挨拶くらいは現地の言葉で)
- 口角を上げる程度でいいから笑顔を忘れていないか?(言葉で伝わらないことも多いので、笑顔でカバーすべし)
- だらしない格好をしていないか?(ファッション文化を尊重すべし)
- 背中を丸めていないか?(こっちの人はやたらと姿勢がいい)
- アジア人同士で固まって浮いていないか?(集団でいると警戒される)
上記を「すべてクリアしている。落ち度はない」と思うなら、、、「たまたま虫の居所が悪かったんやな」と気にしないのが一番。笑
人間らしさを重視するお国柄なので、「仕事だろうが、感情と一致していない行動をとる必要などない」(!)と考える人が多数派であり、明らかに別件で問題があってイライラしているときなど、露骨に不機嫌そうでそっけない。
そのかし上機嫌なときは、気持ちのこもったフレンドリーな態度や言葉でサービスしてくれる。
そんな彼らを、私はとてもいいと思う。
日本のようにどんなにパワハラ、カスハラ(カスタマー・ハラスメント)を受けようが、自分の気持ちとは関係なく顧客に笑顔で対応すべき、なんてサービスを受ける側であっても、つらくなってくる。
店員と客は平等・対等(なんなら店員のほうが上)、という意識が根底にあるので、悪質なクレーマーはほぼ存在しないか、たぶん店員に一蹴されて終わり。
ちょっと大きめのスーパーなど、どこもいかつい黒人ガードマンが配置されているので、彼らにつまみ出されておしまいだろうな、と思う。
ともかく「必ずしも差別じゃないかもですよ」ということ。
恐ろしいアジア人狩り
昨今、パリとその近郊で中国人狩りと呼ばれる強盗事件が頻発し、社会問題になっている。
お店を経営していたり、ブランド品を大量買いしたりする中国人はお金持ちで、多額の現金を持ち歩いているイメージが広まってしまい、なんと10代そこそこの移民ギャングの通過儀礼として、狙いやすい中国人女性が襲われ、金品を奪われている。
被害者が骨折など重症を負う事件や、2016年には被害者が亡くなる事件まで発生し、被害状況は深刻。
また恐ろしいことに、移民ギャングは中国人と日本人の区別なんかついておらず、「アジア人狩り」の様相を呈している。
われわれ日本人がいつ襲われても、不思議はない。
移民地区は怖い
アジア人に差別意識を持っているのは、じつはフランス人として一般的に想起される白人よりも、移民である黒人その他の有色人種(この表現も差別的だと思うけど)に多いようだ。
差別される側での序列とでも言うべきか、「マイノリティとしては圧倒的に先輩格」との意識が強いのか、「自分たちこそがマイノリティ中のマジョリティ、いやすでにマジョリティだ!」といった空気を察することがある。
「アジア人は自分たちより後で来たくせに、最近増えてきて、めっちゃ稼いでて(?)生意気で目障り」てな感じ?
当然ながらそんな輩ばかりではなく、生まれも育ちもフランス、スピリットは完全に自由・平等・博愛な黒人も大勢いて、親切で優しい人も多いのだけれど、パリ郊外のサン・ドニ(Saint-Denis)など貧困層のアフリカ系移民地区には正直、怖くて近づけない。
フランスのような移民大国では、日本では意識することのなかった人種差別問題が身近にあり、ときに身の危険を感じるほどの悪質な差別、もとい犯罪に巻き込まれるリスクもゼロではないので、油断はできない。
同じパリ市内でも、地区によって雰囲気や治安は全然違う。
治安のいいエリアだから絶対安全ということはないが、危険と分かっているエリアには極力近づかない、無駄に華美な格好をしないなど、自衛できるところは自衛して、不要なリスクは避けるようにしたい。
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