美味しすぎて主食化。焼きたてバゲットへの愛を語る 〜おすすめの食べ方、パリでの美味しいバゲットの買い方も〜

ブランジュリー・パティスリーフランスで見つけた美味しいもの

パリカフェモーニングの縦割りバゲット

主食がお米ではなくなる

日本ではお米大好き人間だったのに、パリに来てまもなくバゲットに目覚め、お米からバゲットへと主食が選手交代してしまいました。

ソウルフードであるお米からいとも簡単に乗り換えるだなんて、日本人として何かを捨てているようで、当初こそ「白いご飯食べなきゃ」「日本食材探さなくちゃ」と焦っていたように思いますが、いまではすっかり開き直っています。

パリに住んで米食ではなくバゲット食と化すのは、何かと理にかなっているからです。
現地の食文化に柔軟に適応したほうが、コスパがいいというもの。

ご飯は特A米・炊きたてにこだわり

一方、日本では断然お米・命で、バゲットなどという小洒落た代物とは無縁の生活を送っていたので、あっさりと主食を変えた自分に驚いてもいます。

なんせお米は特A品種(最高評価)にこだわり、最新の平成30年産「米の食味ランキング」(日本穀物検定協会)で、9年連続特Aを受賞した佐賀県産さがびよりを、ふるさと納税で入手していました。

炊きたてにもこだわっていたので、炊飯器の保温機能などは不要です。
お米が炊きあがる時間に合わせて、それ意外の調理を済ませておき、炊きあがりの電子音が鳴ったらすぐさまスイッチを切ってしゃもじでほぐし、いくつか平たく整えてラップに包んだら、残りは手早く盛り付けて「いただきます」。

包んだ分は、粗熱が取れたら冷凍庫へ。
冷凍するにしても、炊きたてをすぐに包んだもののほうが美味しいので、炊けた瞬間から一連の動作はよどみなく行わなくてはなりません。w

日本でのイメージは微妙…

そんな感じでお米>>>パンだったので、バゲットにはあまり興味がありませんでした。

本格派のパン屋さんでたまに買い求めてみるも、たいてい硬くてモサモサしていたり、フレンチレストランの添え物で、ソースを拭うためにしかたなく一切れ食べたり、スーパーで輪切りが袋にまとめられて値引きされていたり。

パンは欧米のものだけど、日本で改良されたふわふわの食パンが一番だよね!と固く信じていました。

本場焼きたてバゲットの実力を知る

ところが本場フランスのバゲット、とくに焼きたてのそれを知ってからはイメージが一変。

まず、焼きたてのバゲットは硬くないんですね。
外側こそややパリっとしていますが、中身はふぁっふあのモッチモチ。

冷めて半日ほど経つと、さすがに固くなってきますが、まだ温かさを保っているバゲットの内なる世界は、あの高級食パン専門店・乃が美の「生」食パンに勝るとも劣らないやわらかさなのです。

そんでもって、立ちのぼる小麦のあまい香り。
小学生の頃「パンの香りの消しゴム」みたいなマニアックな文房具があった気がしますが、この香りのを作ってくれないかな…と思うくらい中毒。

温かいバゲットを抱えて帰る道すがら、芳ばしい香りをフンフン嗅ぎまくるのが至福のときです。
(怪しいアジア人認定)

悶絶級の美味しさを一ミリたりとも捕捉できていない写真。

朝バゲットに目覚めたきっかけ

そんなわけで、ほぼ毎朝バゲットを食べるようになったのですが、きっかけは、じつはネットで拝見した日本のパン屋さん(名古屋市植田駅近くの「ぱぴ・ぱん」さん)のコラムでした。

ぱぴ・ぱん店長おすすめ
おいしいバゲットの食べ方 VOL1
~朝食編~
http://www.papi-pain.jp/bagette-how1.htm

こちらのコラム内で、バゲットは「お腹にやさしくて胃にもたれない、消化によい食べ物」として紹介されています。

バゲットは硬いので一見消化にわるそう〜と思いきや、小麦粉と水と塩、微量のイーストだけでできており、食べごたえがありながら胃の中ではおかゆに近いシンプルさなので、満腹感があってお腹にやさしく、朝食にもってこいのパンだそうです。
しっかり噛まなきゃいけないので、脳に刺激を与えて老化防止になるとも。

それを知って俄然、朝バゲットを食べてみようかな、という気になったわけです。

無塩バター&蜂蜜タルティーヌが至高

あわせて紹介されていたのが、バゲットに付けて食べるものとして「蜂蜜&無塩バターは最高の組み合わせ」ということ。ほんこれ。

フランスの蜂蜜はバリエーション豊かでハイレベル

スライスしたパンに何か具材を乗せたものを、かっこよくタルティーヌ(tartine)と言いますが、フランスでは輪切りではなく縦割りにしたバゲットに、無塩バターと蜂蜜をたっぷり乗せて食べるやり方が主流。

たまにイチゴやローズ、フランボワーズなどのジャムのほか、ゴルゴンゾーラ&蜂蜜にしたりもしますが(これらも絶品☆)、結局のところ、ベーシックな蜂蜜&無塩バターに戻ってきてしまいます。

パリカフェのモーニング。こちらは
イチゴジャム&無塩バターの縦割りタルティーヌ
バターは底のほうまでたっぷり詰まっていました

無塩バターはエシレ

バターはクセのないエシレの無塩Doux(ドゥー)が好きです。

バゲットには塩が含まれているので、その風味を引き立たせるには、無塩バターがマッチするわけです。
日本でバターといえば有塩一択で、無塩はお菓子作り用・業務用なイメージでしたが、いまや我が家の食卓バターは無塩がデフォルト。
有塩はないです。

日本の有塩バターに近いのは、Demi-sel(ドゥミ・セル)にあたりますが、demi(半分の)であっても塩ッ辛くて違和感を覚えます。
そのはず、日本の有塩は塩分1.5%前後のものが多いのに対し、フランスのドゥミ・セルは塩分0.5〜3%と幅があり、どっちかっていうと3%寄りの塩分濃いめのものが多いからなんですね。

フランスは酪農が盛んなので、リーズナブルで高品質な乳製品が大量に出回っており、丸の内でおなじみのエシレ、三ツ星シェフ愛用のボルディエなどの高級バターにも、庶民でも手が届きまくるのが至福。

エシレの無塩(DOUX)。
日本で愛用していた琺瑯製バターケースには入らなかった…。

蜂蜜はマルシェ

蜂蜜はマルシェで仕入れています。

かつてはギャラリー・ラファイエットのグルメ館で、ちょっぴりお高いのを買ってみたりしていましたが、マルシェで買い物していた食通のおじいちゃんに、

「なにギャラリー・ラファイエット?」
「スノッブだねぇ〜! bobo(※)だねぇ〜!」
「マルシェの蜂蜜が最高じゃないか。味見もさせてもらえるよ」

と行きつけのマルシェにたまにやってくる蜂蜜屋さんを激しくおすすめされてからは、そちらで買っています。

※ニューリッチでボヘミアンな若手ブルジョワを指す。皮肉めいて使われることが多い

マルシェのハイクオリティーな蜂蜜
季節のお花フレーバーがメイン
(写真は春バージョン)

安くて美味しい国民食

こんな感じで、いまはバゲットライフを堪能しています。

主な材料である小麦の育成やパンの発酵にかかわる気候風土、そこから派生した食文化など、バゲットはこの地で最適化されたフランスの国民食であり、だからこそ美味しさと安さを両立できるのです。

フランの時代から比べればかなり値上がりしたっぽいですが、それでもあの長くてボリューミーなバゲットが1ユーロ弱で買えるよろこび。

物価の高いおフランスはパリで割高な米食を貫き、まして特A米だなんだとこだわりを貫く余裕は、庶民にはないわけで。
だったらバゲット食に切り替え、炊きたてにこだわるように焼きたてにこだわれば、同じように豊かな食生活を送れるというわけです。

本日の焼き加減を確認する楽しみ

同じお店の同じバゲットでも、職人さんの気分を反映してか、日によって形やコンディション(明らかにボリュームもw)が違うのも面白いです。
いまや1ユーロ硬貨と引き換えにバゲットを渡されて、そのウエストあたりを軽く握るだけで、ある程度よしあしを判定できます。笑

「今日はまた素晴らしく焼きあがってるなぁ。」

とか

「今日はちょっと膨らみが足りないんじゃない?」

などと心の中で勝手に独りごつ。

まるで小動物か何かのようにほんのり温かい焼きたてバゲットを小脇に抱えるだけで、豊かで幸せな気持ちになれます。
安いものです。

美味しいお店は正午過ぎに足で見つける

「で、バゲットの美味しいお店・おすすめのお店はどこ?」

という話になりますが、わたしのおすすめは特定のお店ではなく、

正午過ぎに徒歩圏内のBoulangerie(Boulanger)で買う

ことに尽きます。

フランスの法律により、

  • 冷凍品を焼いて並べるのではなく、生地をこねるところからやってないとパン屋(Boulangerie または Boulanger)を名乗れない
  • パン屋の跡地はパン屋にしかなれない(!)

ので、日本のコンビニほどではないにせよ、パリには一定間隔でパン屋さんが存在します。

ホテルや下宿先、マンションなどから徒歩5〜10分圏内に、Boulangerie(Boulanger)を冠するお店が何軒かあるはずなので、昼12時ちょっと過ぎくらいにそれらを回ってみて、お気に入りを見つけるのがベストだと思います。

なぜ正午過ぎなのかといえば、お昼休みでもっとも需要が高まるタイミングなので、各店気合いを入れてガンガン焼いており、焼き立てが提供される確率が高いからです。

あとは地味に夕方18時過ぎとか、開店直後とかですが、パン屋さんの開店時間は恐ろしく早いので(朝6時とか)、9時くらいだとすでに冷めて固くなったりしています。

バゲットコンクールよりも重要視すべきこと

ちなみにバゲットコンクールなどのランキングに頼るのは、お店が近くにあるのではない限り、あまりおすすめはしません。
ここだけの話、コンクール結果やプロセスを疑問視する声もあるし、せっかくのいいバゲットも、持ち帰るまでの間に冷めてしまっては台なしなんです。

ご近所のBoulangerie(Boulanger)の焼き立て >>> 越えられない壁 >>> 遠方のバゲットコンクール入賞店

の法則(?)は頭の片隅に入れておいてもいいでしょう。

お昼時に近所のBoulangerie(Boulanger)を訪れてみて、芳しい香りとパンを買い求めるフランス人の列が店外にはみ出ていたら、それはもう美味しいバゲットが手に入る確率はかなり高いです。

お気に入りの専用アイテム

さいごに、基本のタルティーヌ、蜂蜜&無塩バターに関するお気に入りの専用アイテムをご紹介しておきます。

これらがあるとないでは、だいぶ違いますよ。
我が家でも毎朝大活躍しています。

ハニーディッパー

蜂蜜は何ですくっていますか?

金属製のスプーンは、化学反応を起こして蜂蜜を変質させるのでよくないらしいです。

木製で変質の心配がなく、くるりと回転させれば蜜の糸をスッと切れる独特な形の木の棒を、ハニーディッパー(honey dipper cuillère à miel)といいます。

こちらはBioのお店で購入したもの。↓

こういう木製のハニーディッパーや専用スプーンを使うと、蜂蜜の純粋な風味を楽しめるのでおすすめです。↓

バターナイフ

LaguioleのバターナイフはBHVで購入。
フランス北部ではラギオール、南部ではライヨールと呼ばれているとか。

ブレッドナイフやジャムスプーンもおそろいのがほしい…!↓

バターケース

BHVのサマーセールで30%オフだったガラス製バターケースを使っていますが、日本で次に買うとしたらこちらにします。↓
(フランスのバター250gは入らないのでご注意を)